屋根裏のゴミ

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【ネタバレ有】ライフイズストレンジ2クリア後感想・考察 | 長く辛い兄弟の旅路を振り返る

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この4連休でLIFE IS STRANGE2がセールになっていたため、衝動買いし一気にプレイ。前作もBTSもプレイ済みなのでかなりの期待をしていたが、結果的にとても満足のいく素晴らしい作品だった。この感動が消えないうちに感想という名の駄文をエピソード毎にしたためておこうと思う。

※もちろんネタバレ全開なので、クリア後の閲覧をおすすめします※

 

 

 

 

 

エピソード1 旅立ち

物語の導入~二人の旅立ち~モーテル

 

メキシコ人移民である父がちょっとした勘違いから銃で撃たれ殺されるという悲劇は、例の黒人事件を彷彿とさせた。このあたりの事件や歴史的背景をきちんと理解していないと、なぜ殺されたのかよくわからないという新しい導入の仕方だったのでなかなか新鮮に感じる悲劇だったと思う。

 

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ガソリンスタンドにいた白人家族や、ショーンを捕まえた爺さん等々…こんなひどい人間しかいないの?ってくらいはじめからひどい仕打ちで泣きたくなる序盤の展開。だからこそブロディが助けてくれた時は心の底からほっとできたし、優しい人がいてくれること、そして出会えたことへの感謝で胸がいっぱいになった。

後で知ったけど、店でキャンプ道具を盗む選択をすると、ダニエルがブロディの車からも盗みをすると聞いて驚愕。兄の背を見て育つのはわかるけど、それは絶対にやったらあかんよ…。ちなみに私は一度も「盗む」選択をせずにクリアまでこぎつけた…よ!(と思ったら家の金を盗んでた)

 

 

モーテルにてスマホを捨てる前に家族3人のクリスマスでの思い出ムービーを見ながら涙を流しているシーン、本当に辛かった…。スマホを捨てるということは、父と3人の思い出を捨てるということも意味しているので、覚悟を決めるのに時間がかかったのだと思う。画面は映さずに動画の声と、動画をみているショーンの姿だけが描かれているわけだけど、ショーンの細かい表情や動き、そして涙する様子などが見事なまでにリアルに描かれており思わずもらい泣き。人物のモデリングが背景と違ってデフォルメ化されているにも拘わらず、あそこまで心を揺さぶられるとは思わなかった。デフォルメ化しているからこそ、プレイヤーの想像を働かせる余地と兄弟に対する微かなベビースキーマを感じさせる部分もあるということなんだろうか。個人的にはすごく良い塩梅の人物モデリングだと思う。

 

 

エピソード2 ルール

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雪中サバイバル~祖父母の家

 

季節が進んで冬。降り積もる雪のフィールドを進む二人をみて、少しラストオブアスを思い出してしまった。アメリカやカナダの雪景色は針葉樹とのマリアージュが美しい。

 

空き家にて暖と食料を確保し、二人で力の特訓をするほほえましいエピソードかと思いきや、マッシュルームの死。あまりにも突然の出来事で、かつまたこの子達から大切なものを奪うのか…と苦しくなった。きっとあそこでダニエルに力を使わせていたら、攻撃的で思い通りにいかないことをすべて力で解決するような子になってしまうと思ったので使わせなかった。殺しても、マッシュはもう戻ってこないしね…。

 

そんな空き家でのサバイバル生活を経て、ようやく祖父母の家にたどり着く二人。いかにも祖父母の家然としており、落ち着ける安心感と懐かしさがあった。整然と片付いた家ながらも、クリスマスの飾りつけや家族写真など、細部に愛情を感じるレイアウトが暖かく、今までの辛い旅路が嘘のようなしあわせなひと時だった。しかし隣人のクリスとダニエルが友達になったことで、遊びとはいえ力を惜しむことなく使い始め、このあたりから少しずつ言うことを聞かなくなってきたのだと思う。

 

だがそんな力の使い方をしていたからこその皮肉なのか、クリスがパトカーに轢かれたところでエピソード2は幕を下ろす。このあたりから今作は本当に容赦がないということを認識しはじめたと思う…。自分が超能力を使えると思い込み、親友を助けるために車に轢かれてしまうって…そんな悲しい体験を9歳の男の子にさせるか…?体験版でクリスをプレイさせ、子供の世界を子供の視点で冒険させた布石はこれかと。かわいい手法でとんでもない展開を用意してくれたものだよDONTNOD…。

 

 

エピソード3 不毛の地

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カリフォルニアの麻薬農園

 

「ダニエルの自我の目覚め」

「兄としての立場」

エピソード3は全体を通してこの二つにテーマが絞られていたように感じた。

徐々に反抗が強まるダニエルに終始手を焼くショーン。このあたりのダニエルの言動にはだいぶイライラしたプレイヤーが多かったのではないかと思う。ただ個人的にこの章は物語の大事な節目を担う役割があったと感じた。ダニエルは自分の能力に対しての承認欲求を満たしたい気持ちと、その気持ちを否定する兄に不満をつのらせ、自分を認めて対等に扱ってくれるフィンに心を開き、兄のように懐いていた。

 

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その反面、ショーンは自分の言うことを全然聞かないダニエルに苛々しつつも、自分よりもフィンに懐いていることに対して多少の妬みも感じ、兄としての振る舞い方を悩んでいた。不器用ながらも成長している兄弟関係が非常にリアルに描かれており、プレイしながら私はどちらの気持ちもわかるなあ…ともどかしい気持ちになりつつ、二人の関係性の展開にどきどき。さすがに給料ゼロになったときはダニエルおまえふざけんなと思ったが、コミュニティのみんなが優しすぎて泣いた。クソガキのせいで給料ゼロになったらさすがに怒るだろと思っていたけど、そんな人ひとりもいなかったよね、優しすぎでしょ…。

 

そして問題の事件。爆発のあとの翌朝、穏やかなBGMとともに爆発現場の様子が流れるシーン、その曲調とは裏腹に悲惨な現場の様子を映すという演出が個人的にかなり好きだった。キャシディ、フィン、メリルが映って、最後にショーンの番がくるわけだが、ガラスの破片が左目に突き刺さり血まみれという、他のどの人物よりも酷い有様なのが皮肉過ぎて辛かった。一般的なアニメや漫画だったら、味方の力は味方に及ばないというのが暗黙の設定になっているが、ダニエルの力にはもちろんそんなご都合主義はなく、敵味方容赦なく傷つけてしまったのである。そしてよりにもよって、一番ダニエルを守ろうとしていた大切な兄が重症を負う結果に。そんな残酷すぎる二人の結末に涙を流さずにはいられなかった。

 

 

エピソード4 信仰

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カリフォルニア~ネバダ

 

人種差別野郎に虐げられるシーンがほんっっっっっとに辛かった。一番つらかった部分といっても過言ではないと思う。たとえ子供であろうとこうも容赦なく弱者をいたぶり、差別し、侮辱し、痛めつけられる人間がいるのかと末恐ろしい…。ただの暴力ではなく、あえて「母国語」で屈辱的な言葉を言わせる、というのがやはり日本人からすると理解出来ないし、身近で起こりえないものだからこそ、未知の恐怖を感じて余計に気持ち悪さが増した。解放された後、くそっっくそっくそっくそっ!!!!!と泣きながら悔しさを声にするショーンが不憫すぎて、ただひたすらに心が痛かった…。無力な自分にも、あんな差別をする人間がいるこの国にも、何故こんな思いばかりをしなければいけないのかという自身の境遇にも、すべてに対して行き場のない怒りと悲しみがこみあげていたのだと思う。

 

そして場面は変わってダニエルを奪還しようと教会の中で何度も立ち上がるシーン。ひたすら泣きながら〇ボタンを押してショーンを立ち上がらせていた。こんなにも辛い思いをしているのにどうしてそこまでして立ち上がれるんだ…。ショーンだけこんなにも辛い思いをしているのに、それでもなおダニエルを助けたいと思ったのは、やはりこれまでの旅路の影響なのかなと。散々に反抗され、力を使って吹き飛ばされ、それでもなお自分にはもう弟しかいないわけで…なんとしてでも守らなきゃいけないという兄としての決意みたいなものも、バラバラになってはじめて芽生えたのだろう。自分はどうなってもいいから弟をとにかく助けたいという強い想いがあまりにも美しく、痛々しく、見ていられなかった。

 

 

エピソード5 狼たち

アリゾナ~国境

 

砂漠の大地アリゾナということもあり、カレンたちの住む集落「アウェイ」はさながらBURNING MANのアートキャンプのようだった。社会の秩序から離れて暮らしたい人々が集まるそのコミュニティは、自由で、開放的で、でもどこか時が止まったかのような感覚をおぼえる。みんな何かしら訳ありの事情で辿り着いているために、余計な詮索はせず、ほどよい距離感でお互いを助け合って暮らしている。そこの描写が非常にリアルで、みな本当に生きている人間のようにみえた。

 

 

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 各エピソード毎にいろいろな人たちと出会い、いくつかのコミュニティに属していたけれど、こういう物語をみる度に思うのが、日本だとどうあがいても実現が難しいということである。日本では年齢の壁を飛び越えコミュニティで親しくするというのがどうしたって難しい。まず年齢を考えてしまい、年上には敬語、年下にはタメ口と、そもそも言葉の使い方からして異なる。

私自身あらゆる国を旅してきて思ったが、海外では年齢の差なんて本当に関係がない。英語に敬語がない(厳密にいえばある)ことが大きな要因なのだろうけど、本当に気楽にどんな年齢の人でも話せて、かつ「友達」になれる。この文化の差は非常に大きいと感じたのだけど、今作でもヒッピーコミュニティやアウェイの人々と兄弟たちが接している姿をみてそう思った。みんな家族のように仲間意識があり、暖かく迎え入れ、ダニエルのことも子供扱いしないのだ。

 

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そんなところにまさかのデイビッド登場。前作の中でもとても好きなキャラクターだったからこそ再登場はうれしかったし、ゲーム開始時に聞かれた「アルカディア・ベイを犠牲にしましたか?」の質問はここに生かされてくるのかと感心した。私はもちろんどちらのENDも見たわけだが、はじめに選択したのは「アルカディア・ベイを犠牲にする」方だったため、こちらで進めていた。妻を失い、家を失い、住んでいた町を失い、そんな失意の中たどりついたのがこのコミュニティだと思うととても感慨深いものがある。彼も非常に数奇で残酷な運命を担わされた人間のため、ショーンの立場からすると少し共感するものがあったのではないだろうか。彼が自分の話をしてその上でアドバイスをしてくれた時は少しだけ心が救われた気がした。最後クロエから電話がかかってきたのもうれしかった。あの反抗娘もちゃんとパパに電話かけるようになったんだなあと。

 

 

 

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国境手前で捕まり、ついに警察へ。

警察署内でダニエルが力を使いショーンを助けに来た時は、「またここから逃げるのか…」と思ってしまった。一体何度脱走を繰り返すのだろうか。直接警察に捕まったというのに、まだ逃げ続けなければいけないのか。一体どこまでいけば逃げずに済むのか…もうそんなことを考えていた。

 

エピソード1からかなりの回数の逃走を二人は繰り返している。はじめは本能的に逃げていたが、途中からダニエルのための脱走になり、そして後半からはもう「ここまできてしまったから、後戻りはできない」という半ばヤケクソのような状態だったのではないかと思う。わからないけど、きっとショーンもこの旅は報われないことを予見していたのではないだろうか。なんとなくだけど、私はそう感じてしまった。

 

はじめからプレイヤーは「メキシコに行ったところで、本当に助かるのか?」という疑問が拭えなかったと思うが、署内のメキシコ人夫婦の会話を聞いても、メキシコからアメリカへ不法移住する人々が絶えないくらい環境も治安もよくないことがわかっている。とはいえ数えきれないほどの罪を犯してしまった兄弟たちが逃れるためには、もはや国外逃亡しかない。目指す場所にも明確な希望が持てず、それでも逃げ続けることしか方法がない、”逃避の生活から逃れるために逃避する”という状態だったのが余計に辛かった。

 

そして再びの国境。もうここへ来る前から、警察署を脱走した時から、この結果はみえていた。ショーンもあのまま逃げられるとは絶対に思っていなかったと思う。ただそれでも、逃げ続けなければいけないから国境まできた。そして、最後の選択を迫られる。

 

 

 

私は「自首する」を選んだ。もう、これ以上ショーンとダニエルに罪を犯してほしくなかった。特にダニエルには人を傷つける力の使い方はさせまいと選択を重ねていたからこそ、警察署内で脱走のためとはいえ彼の力で人を傷つけているのが嫌になっていたのだ。もうこれ以上、自分の弟に手を汚してほしくない、罪を犯してほしくない、その一心だった。

選択後の兄弟の会話は、この辛く厳しい旅路の最期にふさわしい、最高に残酷で悲しいものであった。「お兄ちゃん、頑張ったんだけどな…。」の台詞で涙腺崩壊…これまでのショーンの頑張りが無に帰る瞬間でもあったから、余計に辛いんだよなあ…。

 

 

なんとなくだけど、途中から話の大筋が「火垂るの墓」に近しいものを感じていて、はじめにお父さんが撃たれた時、逃げる選択をしなければここまで罪を犯すことも、辛い旅を送ることもなかったのではないかと思う。「火垂るの墓」で清太が二人で生きていく選択を選んだがために、結局生き延びることが出来ずに死んでしまったが、おそらく清太も親戚の家で世話になり続けていたら生きていられたのではと思う。10代の少年が自らの選択によって過ちを犯し続け、逃避し、弟妹を守りながら生きていくというテーマが、ひたすらに重く苦しいものであった。子供二人で生きていくには、この世はあまりにも残酷で無情なのだ。

 

 

総括

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前評判でとにかく重くて救われない、とは聞いていたがその通りだったし何なら想像の何倍も苦しかった。こんなにも報われないことがあるのかというくらい二人は過酷な運命を背負わされ、各エピソードを終える毎に重く長い溜息をついていた。

正直プレイするのにかなり心と体力を消耗するのでもう一度やりたいとは思えないが(誉め言葉)、それでも各選択肢が気になるのでちょこちょこYouTubeあたりで確認をさせてもらおうかなとは思う。

 

ただこれは間違いなく言えるのが、心に残る唯一無二の傑作だった。

人に大声で薦められるかと言えば素直にイエスとは言えないが、シリアスな話が好きな人、アメリカの社会問題を描いた作品が好きな人、とにかく泣ける作品をプレイしたい人…このあたりには間違いなく刺さると思っている。

ただひたすらに辛く苦しい物語だったが、こうして物語を終えた後にたくさんの想いがあふれている。これらは間違いなくこの作品をプレイしなかったら出会えなかった感情や想いなので、ひとつひとつ大切に紐解いていきたいし、心の底からプレイできてよかったと思っている。

 

 

 

 

 

今回はプレイ後の雑多な感想文だったので、次回は1と2の違いや対比してどうであったかについて書いていきたいと思う。

 

 ここまで読んでくれた心優しい方、本当にありがとうございました!